歴史的に、金の由来を追跡するのは困難だとされてきた。特に、さまざまな出所からの金を溶かして混ぜてしまえば、元々の特徴は失われてしまう。その後は、金融資産としての取引や宝飾品産業での利用も簡単だ。
だが捜査担当者は、状況は変わりはじめているという。「金ターゲティング」と呼ばれる警察のプログラムでは、ブラジル全土からのサンプルを集めたデータベースを作成し、放射性同位体スキャンと蛍光分光法を用いて、元素の固有の組成を特定している。
考古学の分野では以前から使われていた手法だが、鉱業分野で合法な金と違法採掘の金を見分けるために応用したのは、プレトリア大学の地質学者ロジャー・ディクソン氏だ。
大学の研究者との協力で開発されたこのプログラムでは、サンパウロの研究所にある粒子加速器で得られる強力なビームを使い、泥であれ鉛や銅といった他の金属であれ、金に混入したナノサイズの不純物を調べることにより、出所を追跡する材料とする。
連邦警察に最近創設された環境問題・アマゾン担当局のフンベルト・フレイレ局長は、このテクノロジーによって科学者は「ブラジルで産出される金のDNA」を分析できるようになった、と語る。
「自然は金に同位体という目印をつけている。放射性同位体スキャンを使えば、この唯一無二の痕跡を読み取れる」とフレイレ局長。「このツールによって、輸出用に精錬される前までさかのぼって、違法採掘の金を追跡できる」
ここまで微量分析を行えば金(砂金)産地特定が可能なわけだ。 昨年まで函館高専で同様の研究が行われたが、費用の関係でLA-ICP-MSでの分析ができたのはおそらく少数サンプルだと思う。全数測定ができれば東北~北海道の多くの砂金サンプルの微量な不純物のデータベースが作成できるはずなのだが・・・