灰吹き

今、金山博物館では灰吹き方で菱刈金山の鉱石から金を取り出せるか試行錯誤の真っ最中。
一般的に非肉眼的な自然金を含む浅熱水性金鉱床の鉱石から比重選鉱で金を取り出すのはなかなかに困難だったようで、例えば戦前の串木野金山では金の回収率を上げるために混汞法(からの比重選鉱?)を用いても回収率はたったの13.8%であったという・・・
水銀を使ってもこの回収率なのだから、単に鉱石を粉砕して比重選鉱したらほとんど金は回収できないかも? だったら比重選鉱せず鉱石粉末ごと灰吹きしたら金は出てくるだろうか??? ・・・という意図があったかどうかはさておき、鉱石粉末から直接灰吹きをする手法は鉱石中の金銀品位を確認する方法としてJISでも定められていて。

「鉱石中の金及び銀の定量方法 Method for determination of gold and silver in ores」
http://kikakurui.com/m/M8111-1998-02.html

7.4.1.1基準法 この方法は,主としてけい酸鉱及び銅含有率 3% (m/m) 以上の酸化鉱に適用する。
a)表 4及び表 6∼8(3)(4 ) を参考に,金及び銀の含有量に応じて調合する。 なお,融剤は上皿はかりを用いて 0.1g のけたまではかり採る。
b) 光沢紙上で試料と試薬が均一となるまで混合した後 ( 5 ) , 全量を 3 号又は 4 号粘土るつぼに移し入れる。
c) 粘土るつぼの底部を軽く作業台に打ち当てて内容物を緻密に詰めた後,塩化ナトリウムで約 12mm の 厚さに被覆する。
注( 3 ) 一般けい酸鉱の場合は,通常 表6 ,少量の硫化物を含む場合は 表7 ,マグネシウム,アルミニウ ム及びカルシウムの酸化物のいずれかを多量に含む場合は 表8 ,銅含有率3% (m/m) 以上の酸化 鉱には 表4 の例を用いる。
( 4 ) 金銀含有量が,金 1 に対し銀 2.5 以下の場合は,金の 10 倍量の銀を加えた試料を調製し,並行 して全操作を行い金を定量する。銀は加銀しない融解試料から得られた金銀ビードの質量から, 加銀した融解試料から得られた金の質量を差し引いて求める。
( 5 ) 試料と試薬が均一に混合できれば,直接粘土るつぼ中に移し入れ,混合してもよい。
表 6 試料及び試薬のはかり採り量の例 (4) 試料及び試薬 試料のるつぼ融解の場合 補正のるつぼ融解の場合 試料 30g スラグ,キューペルの全量 ソーダ灰 40g 45g 酸化鉛 (II) 45g 30g ほう砂ガラス 8g 20g けい酸 − 12g 小麦粉 3g 2 ∼3g
7M 8111 : 1998
表 7 試料及び試薬のはかり採り量の例 (5)試料及び試薬試料のるつぼ融解の場合補正のるつぼ融解の場合試料 30gスラグ,キューペルの全量ソーダ灰 45g45g酸化鉛 (II)45g30gほう砂ガラス 10g15gけい酸− 12g小麦粉2∼3g 2∼3g鉄くぎ1∼2 本1本
表 8 試料及び試薬のはかり採り量の例 (6)試料及び試薬試料のるつぼ融解の場合補正のるつぼ融解の場合試料 30gスラグ,キューペルの全量ソーダ灰 30g40g酸化鉛 (II)55g45gほう砂ガラス 18g15gけい酸 10g(又はガラス粉末 20g)20g小麦粉 3g 2∼3g

鉱石の種類によってバリエーションがあるが、例えばこんな感じらしい。
金属鉛を使わずに酸化鉛を使うのは石英成分が主体の鉱石をすべて融かしてしまうという意図なんだろう。試薬だけ見るとほとんどガラスの原料だな、これ。

で、結果から言うと、この方法で菱刈金山の金鉱石から金は取り出せていた。

・・・写っていないけど・・・0.5mmくらいかなあ?しっかりと金粒が確認できた。