これまでの一般的な地質屋の解釈では、どこかから来た土砂が覆った、ということになり、しばしば水害で運ばれたと解釈しますが、円墳には土砂の供給元がないので、なんかいな?という感じでした。よく災害の話をするのに、「遺跡って発掘するでしょ。それはね、運ばれてきた土砂で覆われているからだよ」と災害のイメージを説明していましたが、風成層のことは頭にありませんでした。
でも、古墳の葺石は、完璧なキーベッド(鍵層)です。時代も構造もはっきりしていて、侵食もほとんどされません。そして一番高い位置にあるので土砂の供給源がありません。土は「飛んでくる」しかないのです。風成層の存在を説明するのに最上級の証拠ですね。
風成層については、『日本の土』(山野井徹著)を読んで衝撃を受け、『土 地球最後のナゾ~100億人を養う土壌を求めて~ 』(藤井一至著)で、ハッキリわかりました。風成層が全てを覆いつくすんですね。
群馬大の早川先生(火山の先生)は、風成層の研究をされていて、堆積速度を出されています。ローム層は風成層です。火山灰ではありません(火山灰が混じる場合ももちろんあるでしょうけど)。日本に広く分布するローム層の特徴とその成因 (早川1995)堆積速度:0.1~1mm/y(10~100cm/ky)
柴金遺構の年代調査に使えないかな~?と思っていて調べようと思っていた風成層の堆積速度 0.1~1mm/年 か。
飛騨の柴金採掘がいつ行われたのかは判っていない。ざっくりと言えば内ヶ島氏の時代なら550~450年前くらい、金森氏の時代なら400~300年前、明治時代なら150~100年前というところなので、それぞれ風成層の厚さは
・内ヶ島:45~550mm
・金森:30~400mm
・明治期:10~150mm
くらいの範囲に収まるだろう。
柴金採掘は岩盤表面(もしくは偽盤のような砂金濃集層)まで掘っているはずなので、地表面から岩盤面までの深さ・厚さが分かると良い。さらにこの地域でいえば何度か白山の火山灰が降っているはず(1500年代にはそのために不作で寺院関係者が美濃に避難している例がある)。こういうのが鍵層になれば採掘年代が判る気がするんだけど。
それはそうと、この人のブログを何ページか読んでみたけど、この人の考え方は結構好きだなあ(全ページ読んだわけじゃないけどね)。
2021.06.04追記:「ブログ内で紹介されている論文の風成層の堆積速度は火山地帯のもので一般化できないのでは?」という指摘があった。 飛騨も白山と乗鞍火山帯に挟まれているので火山地帯ではあるとは思うけど、確かに降灰量は不明(というか調べていない)ので上に書いた風成層の厚さの具体的な数値に関しては改めて調べて検討する必要がある。 遺構が風成層で埋まるのは確かなので言いたいことは変わらないけどね。