原子炉錬金術

先日の信州砂金掘り旅行の際に車中で話題になった「水銀から金を作る方法」・・・実証実験をやろうなんて話(クラウドファンディング)があったのね~

https://academist-cf.com/projects/72?lang=ja

原子炉錬金術とは

元素が変換するということは、原子番号(陽子数)が変わるということです。多くの原子核は、中性子をひとつ吸収するとγ線を放出します(中性子捕獲反応)。その結果生成された原子核は放射性であることが多く、電子を放出して中性子が陽子に変わる原子核崩壊(β崩壊、陽子数が1増加)、もしくは軌道電子を原子核中性子が取り込んで陽子が中性子に変わる原子核崩壊(電子捕獲、陽子数が1減少)を起こし、周期表でみて右か左にある隣の元素に変化します。これが原子炉錬金術の原理です。 

ここまでは良く聞く話で・・・

ここからの詳しい話は初めて聞くなあ

金(Au)の隣に位置する水銀(Hg)は、中性子の数が異なる7種の同位体(Hg-196, Hg-198, Hg-199, Hg-200, Hg-201, Hg-202, Hg-204)が、放射線を出さない安定核種として自然界に存在しています(下図)。その中でHg-196は、中性子の数が116個と最も少なく、いわば「中性子欠乏状態」にあります。こうした中性子不足の原子核は、飛んできた中性子を捕獲する確率が高いという特徴をもちます。すなわちHg-196に中性子を照射すると高い確率(核物理的に早い速度)でHg-197となり、生まれたHg-197は速やかに崩壊(電子捕獲)して金(Au-197)へと変換するのです。 

それならば水銀からドンドン金ができる!と思われるかもしれませんが、残念ながら金になる水銀同位体Hg-196は、水銀全体の0.15%しか存在しません。残りの99.85%の水銀は金を生まない水銀なので、大量の水銀に中性子を照射しても僅かな金しか得られないことが容易に推測されます。コンピューターを用いた我々の予備解析からは、たとえば1リットルの水銀(約13kg)を大型商用原子炉に装荷する場合、1年間程度の連続照射で10g程度の金が得られる結果が示されています。随分少量と思われるかもしれませんが、そもそも金に変化するHg-196の天然組成比が僅か0.15%、重量でいうと20gほどなので、その約半分が金に変わるという計算です。 

 ん~ ということは、ウランの同位体分離のようにして予めHg-196を濃縮してから装荷すれば金への変換率が上がるわけだな。余計にお金はかかるけど。

研究費サポートのお願い

コンピュータ解析で示された人工的錬金術の実現可能性を実証するため、研究用の原子炉(研究炉)を用いて水銀から金を生成することが最終的な目的です。これを実施するには、下記(1)~(7)のステップを段階的に進めていかなければなりません。今回のプロジェクトでは、下記ステップの(3)までを実施し、原子炉錬金術実験を確実に開始できる環境整備を行います。 

(1)実験を行う研究炉の決定 
(2)水銀装荷の研究炉への影響や金生成量の評価 
(3)実験実施の認可取得 
(4)水銀ターゲット製作と炉心への装荷 
(5) 炉心での照射 
(6)取り出し・冷却 
(7)金の分離回収 

 

 で、(7)までやって回収された金(の一部)がクラウドファンディングのリターンだったら是非とも参加してみたいところなんだけどねえ。